高知地方裁判所 昭和56年(ヨ)163号 判決 1983年5月23日
甲事件申請人・乙事件被申請人(以下「申請人」という。)
永野公明
同右
田中明
同右
大川一成
同右
福田昇
同右
山田利夫
同右
坂本宗嗣
右六名訴訟代理人
戸田隆俊
甲事件被申請人・乙事件申請人(以下「被申請人」という。)
中央生コンクリート株式会社
右代表者
池本博光
右訴訟代理人
氏原瑞穂
甲事件被申請人(以下「被申請人」という。)
池本興業株式会社
右代表者
池本惇一
右訴訟代理人
南正
主文
一 申請人らの主位的仮処分申請をいずれも却下する。
二1 被申請人中央生コンクリート株式会社は、申請人らを自社に派遣を受けた生コンクリートミキサー車の運転手として取り扱わなければならない。
2 被申請人池本興業株式会社は、申請人らを、被申請人中央生コンクリート株式会社への派遣従業員として取り扱わなければならない。
3 被申請人池本興業株式会社は、申請人らに対し、それぞれ別紙賃金目録(二)記載の各金員及び昭和五七年一月以降本案判決確定に至るまで毎月五日限り同目録(一)記載の割合による各金員を支払え。
4 申請人らのその余の予備的仮処分申請をいずれも却下する。
三 被申請人中央生コンクリート株式会社の仮処分申請をいずれも却下する。
四 申請費用は、これを五分し、その一を申請人らの、その三を被申請人らの、その一を被申請人中央生コンクリート株式会社の各負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
(甲事件)
一 申請人ら
1 主位的申請
(一) 被申請人中央生コンクリート株式会社(以下「被申請人中央生コン」という。)は、申請人らを従業員として取り扱わなければならない。
(二) 被申請人らは各自、申請人らに対し、それぞれ別紙賃金目録(四)の(1)の②欄記載の各金員及び昭和五六年一〇月以降毎月五日限り同目録(一)記載の割合による各金員を支払え。
2 予備的申請
(一) 被申請人らは、申請人らを被申請人中央生コンの生コンクリートミキサー車の運転手として取り扱わなければならない。
(二) 被申請人池本興業株式会社(以下「被申請人池本興業」という。)は、申請人らに対し、それぞれ別紙賃金目録(四)の(1)の②欄記載の各金員及び昭和五六年一〇月以降毎月五日限り同目録(一)記載の割合による各金員を支払え。
3 申請費用は被申請人らの負担とする。
二 被申請人ら
1 主位的申請及び予備的申請をいずれも却下する。
2 申請費用は申請人らの負担とする。
(乙事件)
一 被申請人中央生コン
申請人らは、別紙物件目録記載の土地のうち別紙図面の斜線内にある生コンクリート製造工場及びその敷地(同図面斜線部分)内に立ち入るなどして、被申請人の業務並びに右工場及び敷地に対する占有使用を妨害してはならない。
二 申請人ら
1 本件申請を却下する。
2 申請費用は被申請人中央生コンの負担とする。
第二 当事者の主張
(甲事件)
一 申請の理由
1 被申請人中央生コンは、昭和五〇年九月二九日に設立された生コンクリート(以下「生コン」という。)の製造・販売・運搬を業とする株式会社であり、同池本興業は、昭和四五年八月三一日に設立された砂利の購入・販売を営む株式会社であり、被申請人らの本店及び現場作業所はいずれも同一敷地内に所在している。
被申請人らは、池本惇一、池本博光の兄弟を中心とする池本一族が資本のほとんどを出資している同族会社であり、池本惇一は被申請人池本興業代表取締役のほかに同中央生コンの代表取締役を兼ね、池本博光は同中央生コン代表取締役のほかに同池本興業の取締役を兼ねている。
申請人らは、いずれも被申請人中央生コンの指揮・管理の下に生コンミキサー車(以下「ミキサー車」という。)の運転業務に従事してきたものである。
2 被申請人中央生コンは、申請人らに対し、昭和五六年七月二二日、申請人らミキサー車の運転手は自社の従業員ではなく、被申請人池本興業の従業員であり、被申請人ら間の従業員派遣契約に基づき申請人らを受け入れてミキサー車運転の業務に従事させていたのであるが、申請人らの行状が悪いので、同月一八日付をもつて同月三一日限りで右派遣契約を解除することにしたと主張し始め、同年八月一日以降、申請人らの就労を拒否する態度に出た。
他方被申請人池本興業も、被申請人中央生コンに呼応して同年七月三一日、「申請人らは自社の従業員である。派遣契約が解除されたことにより就労すべき業務がなくなつたため、同年八月一日以降自宅待機を命ずる。賃金は平均賃金の六〇パーセントを支給する」旨申請人らに通告し、更に同年八月二二日には、同被申請人のダンプ車への乗車業務を命じたうえ、これを拒否した申請人らに対し、六日間の出勤停止処分をなすに至つた。
3 申請人らと被申請人中央生コンとの間には、次のとおり明示の労働契約が成立している。
すなわち、申請人らが雇用された時期は、申請人永野が昭和五三年七月一日、同田中が同年九月頃、同大川が昭和五〇年一二月一〇日、同福田が昭和五四年一月五日、同山田が昭和五二年九月一日、同坂本が昭和五一年三月頃であり、申請人らはいずれもその頃採用面接を受けたが、面接の相手方は、申請人永野、同田中については被申請人中央生コン取締役兼工場長の長瀬明弘であり、その余の申請人ら四名については同被申請人代表取締役池本博光であり、この面接において、職種はミキサー車の運転手であること、その他賃金、労働時間等の労働条件について説明を受けた。その際、申請人らは誰一人として、雇主は被申請人池本興業であるが、ミキサー車の運転手として被申請人中央生コンに派遣されるものであるとの説明は全く受けていない。
右面接の結果、申請人らと被申請人中央生コンとの間に明示の労働契約が成立し、申請人らは以後ミキサー車運転の業務に従事してきた。
4 そして、被申請人中央生コンと同池本興業との間には、同中央生コンの申請人らに対する賃金支払債務及び社会保険料支払義務を同池本興業において併存的に債務の引受をする旨の契約が成立しており、これに基づき、申請人らの賃金及び社会保険料は、被申請人中央生コンから同池本興業に支払われ、同被申請人から申請人らに賃金が支給されていた。
5 仮に、申請人らと被申請人中央生コンとの間に明示の労働契約が認められず、一応形式的には、申請人らの雇主は被申請人池本興業であつて、同被申請人と被申請人中央生コンとの派遣契約に基づき申請人らがミキサー車運転の業務に従事していたものとしても、申請人らと被申請人中央生コンとの間には次のとおり黙示の労働契約が成立している。
(一) 依るべき意思表示理論
いうまでもなく憲法は国民の生存権的基本権を広範囲にわたつて保障し、その中に勤労の権利(二七条)が規定されている。これから読みとれる憲法の理念・精神は、私人どうしの法律関係を律するに際しても尊重され、指導理念とされるべきである。ところで、伝統的・古典的な契約理論すなわち意思表示理論は、自由・平等・独立の法主体たる私人どうしの交渉を前提にしているのに対し、現実の社会における労務を供給する契約の法主体たる私人どうしは、決して右のような前提関係にないことが圧倒的である。このように使用者と労働者の力関係に差がある場合、そのことを無視することは相当でなく、しかも、この力関係において優位にある使用者側に職業安定法四四条違反等がある場合には、使用者の有する社会的・道義的責任との関連で、労働者の生存権がより保障される方向で、逆にいえば使用者の社会的・道義的責任が正しく追求される方向で伝統的な意思表示理論の修正が必要とされるのである。
すなわち、労働契約の成立を論じる場合において、その成立には当事者間の合意の存在が不可欠であるという前提に立つとしても、そこにいう当事者の意思は、当事者間に存在する使用従属関係という客観的事実の中から推定される意思、つまり当事者が主観的にどのような意思を表明していても、あくまで客観的事実を中心としてその存在を推定する客観的推定意思を拠りどころにすべきである。
(二) 申請人らと被申請人中央生コンとの使用従属関係
(1) 申請人らは、被申請人中央生コンの服務規律に従い、出勤すると事務所に設置されたタイムカードに打刻し、これを同被申請人従業員用のタイムカード入れに差し込み、同被申請人配車係竹村幸次郎ないしは前記長瀬明弘の指揮を受けて、生コンを注文先へ配達していたものであり、同人らの指揮がない場合には同被申請人の会社の休憩室で待機していた。また、注文先現場においては、申請人らは、岸本修己ら同被申請人従業員の指揮監督を受けて就業していた。
これに対して、被申請人池本興業代表取締役池本惇一はじめその従業員が申請人らを指揮監督することは全くなかつた。
(2) 申請人らが後記のとおり労働組合を結成するまでの賃金改定及び夏季・冬季の一時金に関する交渉は、すべて前記池本博光が被申請人中央生コンの代表取締役としてこれを行つていた。
(3) 被申請人中央生コンは、申請人らに対し、自社のネーム入り作業服を支給し、かつ通産省に対しては、申請人らが自社の従業員である旨報告している。
(4) 他方、被申請人池本興業の従業員(ダンプ運転手)の場合には、勤務時間の定めはなく、就労の内容は砂利(骨材)を運搬する回数で定められている。また、砂利の運搬先も固定している。したがつて、特に変更のない限り、運転手が何時に出勤しようと差支えなく、早朝から仕事にかかり午後一時頃に仕事を終える者もいる。
このように、被申請人ら間における勤務体制は全く異なつているのである。
(5) 以上の事実関係から明らかなとおり、被申請人中央生コンは、申請人らを自己の決定する職場秩序に組み入れ、その作業を直接、かつ現実的に指揮監督し、もつてその作業過程を支配している。これに対し被申請人池本興業は、申請人らの作業につき全く支配力を有していない。
(三) 職業安定法四四条違反及び労働基準法六条違反
職業安定法四四条は、労働者供給事業を行うこと等の禁止を定めており、同法施行規則四条一項によれば、労働者を提供してこれを他人に使用させる者は、たとえ契約の形式が請負契約であっても、同項所定の四つの条件をみたすものでない限り、法の禁止する労働者供給事業を行う者とみなされる。その四条件を要約すると、①作業の完成につき事業主として一切の責任を負うこと、②労働者を指揮監督すること、③使用者として法律に規定されたすべての義務を負うこと、④主要な生産手段を準備、調達し、又は請負作業の企画運営能力をもつものであつて、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと、である。
本件の場合、被申請人ら間の派遣契約の内容は、生コン販売に不可欠なミキサー車の運転手につき被申請人池本興業から同被申請人の従業員の派遣を受け、その対価たる派遣料(申請人らの給与相当分を含む。)については、毎月末日に締めて翌月五日に被申請人中央生コンから同池本興業に支払う、というものであり、現実の使用従属関係は前記(二)のとおりであるから、明らかに右四条件の②と④に反している。
更に右派遣契約は、中間搾取の排除を定める労働基準法六条にも違反している。
以上のとおり、被申請人ら間の派遣契約は、右各法条に違背するもので、公序良俗に反し無効である。
(四) 黙示の労働契約の成立
職業安定法四四条及び労働基準法六条は、もとより労働者を保護し、労働の民主化をはかる規定であるから、被申請人中央生コンの派遣契約の解除によつて同被申請人が違法な労働者供給事業への加担から身をひく結果になるとはいえ、それが右各法規の目差す労働者保護及び労働の民主化をはかることに全く逆行する結果をも招来することは容認すべからざる背理であつて、その逆行する結果を回避すべき責任は、労働者たる申請人らにはなく、使用者たる被申請人中央生コンにあるというべきである。したがつて、派遣契約を盾に、申請人らの提供した労働を、申請人らとの労働契約の意思表示の合致とは無関係のものと主張することは許されない。
そして、前記のとおり申請人らと被申請人中央生コンとの間の使用従属関係の存在及び内容は、単に事実上のものにとどまるというのでは正確な説明がつき難く、労働契約という概念でのみ架橋が可能となる。
しかして、前記使用従属関係から推認される申請人らの客観的意思は、明らかに被申請人中央生コンに対する労働契約締結の申込みであり、他方右と同様に推認される同被申請人の客観的意思は、申請人らとの間に労働契約の存在することを容認していたもの、すなわち申請人らの右労働契約締結の申込みを黙示的に承諾済みであつたものと評価することができるのである。
6 右のとおり申請人らと被申請人中央生コンとの間に黙示の労働契約が成立する一方で、前記4のとおり、被申請人中央生コンと被申請人池本興業との間においては、申請人らに対する賃金支払債務につき併存的債務引受契約が成立している。職業安定法四四条等に違反する派遣契約も、併存的債務引受と解してはじめて有効たりうるのである。
また、申請人らと被申請人池本興業との間には、労働契約が成立しているものとも解される。この場合、申請人らと被申請人らとの間で二重の労働契約が存在していることになるが、実態は、労働者たる申請人らにとつて、被申請人らが使用者側として存在し、被申請人ら相まつてはじめて通常の労働契約における使用者たる地位にあると評価できるのである。
7 以上のとおり、明示的にせよ黙示的にせよ申請人らと被申請人中央生コンとの間には労働契約が成立しているから、被申請人中央生コンの派遣契約の解除は、申請人らに対する解雇の意思表示と目すべきものである。
しかしながら、この解雇の意思表示は、次の理由により無効である。
(一) 不当労働行為
本件解雇は、労働組合法七条一号の不利益取扱い及び同条三号の支配介入に該当し無効である。
(1) 被申請人らの賃金・一時金は低額で、労働時間は長く、積載違反を強要するなど労働条件は劣悪であった。被申請人らのミキサー車運転手及びダンプ運転手は、合同で代表者を選出し、前記池本博光と労働条件の改善交渉を重ねてきたが、力が弱く、池本博光の思うがままになつていた。
そこで、申請人らは、労働組合を結成して労働条件の改善をはかるしかないと考え、昭和五六年六月二六日、ミキサー運転手一二名及びダンプ運転手六名の参加により高知一般労働組合香長支部(以下「組合」という。)を結成し、申請人永野が支部長に、同田中が書記長にそれぞれ選任された。
(2) 組合は、結成後直ちに池本博光に対し、夏季一時金及び労働協約の締結について団体交渉の申入れをしたところ、同人は、はじめて派遣契約の存在を主張し、派遣従業員との団体交渉はできないとして、右申入れを拒絶した。その際同人は、従前の交渉につき、被申請人池本興業の代表者池本惇一が多忙のため、同被申請人の専務として自己が池本惇一に代つて交渉にあたつてきたにすぎない旨弁解した。
組合は、やむなく池本惇一に団体交渉を申入れ、同年七月九日、同月一四日の両日に団体交渉を行つたが、物別れとなつた。そこで、同月一六日から時間外労働拒否の組合活動を行つた。同月二〇日、第三回の団体交渉がもたれ、夏季一時金につき妥結をみた。これに伴つて、時間外労働拒否も解除された。
(3) ところが、同月二二日に至つて突然、前記派遣契約の解除の主張が申請人らに知らされ、同月三一日には、被申請人池本興業より前記自宅待機命令が出された。
組合は、直ちに団体交渉を申入れ、同年八月三日の第四回団体交渉において、右契約解除及び自宅待機命令等の撤回を要求したが、全く開き入れられなかつた。
かえつて同月二二日には、被申請人中央生コンが申請人らに対し立入禁止命令を発し、同池本興業が前記2のとおり出勤停止処分を行つた。なお、この出勤停止処分の前提となつているダンプ車への乗車命令は、一台のダンプにつき申請人らを含む運転手一〇名で交替乗務せよというものであり、その乗務日しか賃金が支給されないものであつて、まさに不当な命令というほかなく、仮に被申請人池本興業の従業員であるとしても、到底従えるようなものではなかつた。
(4) 派遣契約の解除を知らされた昭和五六年七月二二日から同年八月三日までの間に、ミキサー車運転手二名、ダンプ運転手三名が組合を脱退した。そしてその後、本件紛争の長期化に伴つて、ミキサー車運転手の組合員四名が賃金の四〇パーセント不支給による生活の困窮化のため、やむなく退職していつた。
ところで、被申請人中央生コンは、昭和五六年四月生コン協同組合に加入したが、同組合よりミキサー車削減を指示された。池本博光は、同年六月、二名の希望退職者を募り、その際退職者には従前に比し破格の退職金を支給する旨申し添えたが、期限の同月末までにこれに応じたものは皆無であつた。このように被申請人中央生コンにとつては、従業員整理の必要があつたものであり、すでに四名のミキサー車運転手が退職している以上、少くとも結果論としては、派遣契約の解除によつてその目的を遂げたものといえる。
他方、被申請人中央生コンは、組合を脱退した西岡幸雄及び田渕務の両名につき、脱退後まもなく、復職を認めてミキサー車に乗務させている。
(5) 被申請人中央生コンは、派遣契約の解除理由として「申請人らが、被申請人中央生コンの再三にわたる制止にも拘らず、休憩時間中等に同被申請人の電話を使用するなどして競輪・競馬のノミ行為に関与したり、自家用車で出勤しながら終業時には、近隣の酒店から酒類を買入れて同被申請人の会社内の休憩室において飲酒したうえ車を運転して帰宅するなどし、同被申請人の信用の失墜はもとより防火上の危険をも考慮せざるを得なくなつた。」ことを挙げている。
しかしながら、右理由は口実にすぎないものである。たしかに申請人らの一部の者がノミ行為に関与したり、飲酒運転をしたりしたこと、申請人らが右休憩室で飲酒したことは否定できないけれども、このようなことは全社的に行われていたことであつて、申請人らだけが非難される理由は全くない。すなわち、休憩室での飲酒については、池本博光自身、申請人らに酒をふるまうことがしばしばあり、従業員全員において行われていた。飲酒運転についても、前記長瀬明弘が二回検挙されているほか、池本博光自身も二日酔の状態で検挙されたことがある。またノミ行為も、申請人らの一部の者に限らず、他の従業員も行つていた。特に中心となつていたのは、前記西岡幸雄、前田憲秀及び池本博光の女婿にあたる池本静男であり、同人らが胴元へ電話をして申込んでいたものであり、申請人らの一部の者は、右の者らに依頼してノミ行為に関与していたにすぎない。なお、被申請人らの会社内においては、オイチョカブなる賭博が広範に行われており、一般従業員や前記長瀬明弘及び池本静男はもとより、池本博光やその妻の「あや」までもこれに加わつていたのである。以上のように、右各行為は全社的に行われていたものであるから、当然、被申請人中央生コンからの制止も全くなかつた。
したがつて、申請人らが右のような行為に加担していたからといつて、申請人らのみが不利益処分を受けるいわれはいささかもない。
なお、被申請人中央生コンは、前記希望退職者募集の際にも、申請人らの品行の点については全く触れておらず、またノミ行為等の賭博の主犯格ともいえる前記西岡幸雄について組合脱退後に復職を認めている点からしても、同中央生コンの挙示する解除理由が単なる口実にすぎないことが明白である。
(6) 以上を要するに、被申請人中央生コンは、申請人らが組合を結成し、団体交渉の申入れをし、時間外労働拒否等の正当な組合活動をしたことを嫌悪し、被申請人池本興業と共謀のうえ組合潰しを決意し、派遣契約の存在とその解除を主張して申請人らを解雇したものである。
右解雇は、申請人らからミキサー車の運転という業務自体を奪うものであつて、明らかに不利益取扱いであるし、そのことによる組合の弱体化をねらつた支配介入でもある。
(二) 解雇権の濫用
仮に不当労働行為が成立しないとしても、被申請人中央生コンが挙げる派遣契約の解除、すなわち解雇の事由は、前記のとおり単なる口実にすぎないものであつて、解雇権をもつて臨まねばならないような事情は全くないから、本件解雇は解雇権を濫用したものといわざるを得ない。
8 そして、右のとおり被申請人中央生コンの解雇が無効である以上、同池本興業は、申請人らに対し、同中央生コンとともに賃金支払義務を負つているから、前記賃金の四〇パーセント不支給を伴う自宅待機命令及び賃金の一〇〇パーセント不支給を目的とする出勤停止処分は、いずれも無効たるを免れない。
9 以上によれば、被申請人中央生コンは、申請人らをその従業員として取り扱わねばならず、かつ、同池本興業とともに申請人らに対し、後記の賃金を支払わなければならない。
10 仮に、黙示的にせよ申請人らと被申請人中央生コンとの間には労働契約が成立しておらず、申請人らの雇主は被申請人池本興業であつて、派遣契約に基づき同中央生コンの業務に従事していたものとしても、前記のような同中央生コンと申請人らとの使用従属関係の存在及び内容に徴すれば、申請人らと被申請人中央生コンとの間には労働組合法の適用を受けるべき労働関係が成立しているものとして、被申請人中央生コンは労働組合法七条の「使用者」にあたるというべきである。そして、被申請人中央生コンによる派遣契約の解除が不当労働行為として無効であることは、既述のとおりである。したがつて、同被申請人は、従前どおり申請人らをミキサー車の運転手として従事させる義務がある。
他方、被申請人池本興業も、雇主として申請人らを、派遣契約に基づくミキサー車の運転に従事させなければならない。そして、被申請人中央生コンの派遣契約の解除に呼応してなされた被申請人池本興業の申請人らに対する前記自宅待機命令、出勤命令及び出勤停止処分も不当労働行為として無効であるから、申請人らに対し、右各処分前と同様の賃金を支払う義務がある。
11 申請人らの賃金は、月払いの日給制であつて、毎月末日締の翌月五日払いとなつており、昭和五六年五月から同年七月までの三か月間の平均賃金の日額は別紙賃金目録(三)記載のとおりである。
被申請人らは、同年八月分として、同目録(四)の(1)の①欄記載の賃金を支払つたにすぎないので、申請人らは、右平均賃金額の二六日分と右支払額との差額、すなわち同目録②欄記載の各金員について請求権を有し、また同年九月分以降は、右平均賃金の二六日分、すなわち同目録(一)記載の金員について請求権を有する。
12 申請人らは、賃金を唯一の生計の資とする労働者であり、賃金の不支給により生活に困窮を来たしており、早急に救済されなければならない。
13 よつて、申請人らは、主位的に、被申請人中央生コンに対し従業員としての取扱いを、被申請人らに対して前記賃金の支払いを、それぞれ仮に求め、予備的には、被申請人らに対しミキサー車の運転手としての取扱いを、被申請人池本興業に対して右賃金の支払いを、それぞれ仮に求める。
二 申請の理由に対する被申請人らの認否
1 申請の理由1のうち、被申請人らが同族会社であることは否認するが、その余は認める。
2 同2は認める。
3 同3は否認する。
申請人らの雇主は被申請人池本興業である。申請人らの採用にあたつては、池本博光が同被申請人の人事権を有する取締役として面接を行い、同被申請人の従業員として雇傭することを告知している。申請人らは、同被申請人の従業員としての地位を保持しつつ、同被申請人の就業規則二八条一項に基づく指示により、被申請人中央生コンに派遣され、ミキサー車の運転乗務に従事していたものである。
4 同4のうち、被申請人池本興業から申請人らに賃金が支給されていたことは認めるが、その余は否認する。
同被申請人は、雇主である故に当然のこととして賃金を支払つていたものであり、また申請人らに関する社会保険料も自己の負担において出損していた。
5(一) 同5冒頭の主張及び同5(一)の主張はいずれも争う。
(二) 同5(二)について
(1) その(1)のうち、ミキサー車の運転乗務につき、申請人らが被申請人中央生コン従業員の指揮・監督を受けていたことは認めるが、その余は否認する。
右の指揮・監督は、被申請人中央生コンに派遣されている以上、当然のことである。また、被申請人らのタイムカードは載然と区別されており、申請人らは被申請人池本興業用のタイムカードに打刻していたものである。
(2) その(2)は否認する。
申請人らは、被申請人池本興業の他の従業員とともに同被申請人との間で、労働条件に関する交渉を行つてきたものであり、他方被申請人中央生コンの従業員については、申請人らとは別途に右交渉が行われてきた。なお、申請人らとの交渉に池本博光があたつていたとしても、これは被申請人池本興業の取締役としての対応にすぎないものである。
(3) その(3)は認める。
派遣先企業が派遣労働者に対し自社のネーム入り作業服を支給するのは当然のことであり、また通産省への報告については、派遣労働者も含めて記入せよとの記載要領に従つたまでのことである。
(4) その(4)は否認する。
(5) その(5)は否認する。
(三) 同5(三)の主張は争う。
(四) 同5(四)の主張は争う。
6 同6は否認する。
7(一) 同7冒頭の主張は争う。
(二) 同7(一)について
(1) その(1)のうち、組合結成の経緯については不知、その余は否認する。
申請人らに支給されていた賃金は同業他社に比し高額であり、また被申請人中央生コンが容量の定まつたミキサー車について積載違反を強要できるはずがない。池本博光は、被申請人池本興業の取締役として、申請人らから労働条件改善の申入れを受け、他の役員と協議のうえその改善につとめてきたところであり、それ故にこそ、現在もなお、ダンプ運転手の方は円満に業務に服しているところである。
(2) その(2)のうち、組合が池本博光に対し団体交渉の申入れを行つたこと、同人が被申請人池本興業代表取締役池本惇一との交渉方を要請したこと、その後における組合と池本惇一との交渉の経緯及び組合による時間外労働拒否活動の経緯は認めるが、その余は否認する。
(3) その(3)のうち、第四回団体交渉までの経緯、その後立入禁止命令及び出勤停止処分がなされたことは認めるが、その余は否認する。
(4) その(4)のうち、被申請人中央生コンによる希望退職者募集の経緯とその内容は否認するが、その余は認める。
希望退職者募集が行われたのは、被申請人池本興業においてである。すなわち、同池本興業は、一般市況の低迷に加えて公共事業の抑制等により極めて深刻な不況に陥つたことから、昭和五六年六月、申請人らミキサー車の運転手のみならずダンプ運転手その他の全従業員を対象として、希望退職者を募つたものである。
西岡幸雄及び田渕務の両名は、被申請人池本興業在職当時も勤務態度、成績ともに良好であつたため、両名の希望により、被申請人中央生コンが臨時従業員として採用し、ミキサー車に乗務させているものであつて、採用にあたり、組合員でないとか、或いは組合を脱退することを条件にしたこと等は全くない。
(5) その(5)のうち、被申請人中央生コンが挙げた派遣契約の解除理由の内容は認めるが、その余は否認する。
同中央生コン従業員のうち、前記長瀬明弘が昭和五三年頃飲酒運転で検挙されたことがあるけれども、同人に対してはその際厳重な注意がなされ、それ以後は無事故・無違反で今日まで経過しており、またその他の従業員数名がかつて申請人らに誘われて一、二度オイチョカブに手を出した事実があるやに聞き及んでいるが、右従業員らに対しては昭和五五年三月頃に厳重な注意がなされているところであつて、その後は一切賭博行為には関与していないものである。いわんや、池本博光自身が賭博に参加したり、飲酒運転をしたりしたことはない。
(6) その(6)は否認する。
(三) 同7(二)の主張は争う。
8 同8ないし10の主張は争う。
9 同11のうち、申請人らの賃金体系、平均賃金額、昭和五六年八月分として申請人らに支給された賃金額は認めるが、その余は否認する。
10 同12は否認する。
申請人らは、被申請人池本興業から平均賃金の六〇パーセントを受給するかたわら、前記自宅待機命令に反してアルバイトを行い、相応の収入を得ているものであつて、保全の必要性がない。
三 被申請人らの主張
1 申請人らの雇主について
申請人らの採用時の事情、賃金・社会保険料の支出、タイムカードの打刻、労働条件の改善をめぐる交渉等の各事情については、既述のところであるが、そのほかに、申請人らは被申請人池本興業から前借を受けたこともあり、また、昭和五三年六月から昭和五五年一〇月にかけて三、四回にわたり、申請人大川を代表者として、池本博光に対し、被申請人中央生コンの従業員としての採用を願い出たこともある。これに対して池本博光は、後記のような事情から設立以来ミキサー車の運転手の派遣を受けているものであつて、その方針を変更することはできない旨を説明し、申請人らもこれを納得して右申出を撤回するに至つていたものである。加えて、申請人らは、組合設立の通知も被申請人池本興業に対して行つているものである。
以上のとおり、申請人らの雇主が被申請人池本興業であることは明白である。
2 派遣契約の締結について
生コンの販売量は月によつて変動し、一定しないことから、自社でミキサー車の運転手を採用した場合には、その需要がないときにも運転手に対する給料を支払わねばならず、その固定人件費が企業経営を圧迫する事態を招来するため、被申請人中央生コンにおいては、仕事量の多募に応じて他社からミキサー車の運転手の派遣を受けることとし、昭和五〇年一二月一〇日の取締役会においてその旨決議した。そして翌一一日、被申請人池本興業との間で、ミキサー車の運転手につき同池本興業の従業員の派遣を受け、その対価として派遣料を、毎月末日に締めて翌月五日に同池本興業に支払う旨の派遺契約を締結した。
申請人らは、右派遣契約に基づき、被申請人中央生コンに派遣され、ミキサー車の運転業務に従事していたものである。
3 派遣契約解除の背景について
昭和五四年頃から申請人らの間において、業務時間中にもわたるノミ行為等の賭博行為、休憩室での大量飲酒とその後の飲酒運転等が目立つようになり、池本博光もそのような行為を現認するたびに厳重注意を繰り返えしていたが、一向にその態度は改まらなかつた。
かえつて昭和五六年に入つてからは、申請人ら派遣運転手らの賭博熱はますます高じ、池本博光の見回りを回避すべく見張役を立てながら、オイチョカブに興じるようになつた。これを認めた池本博光は、賭博行為の厳禁を命じるとともに、賭博行為等が継続したときには派遣契約を解除する旨の警告を発した。
しかしながら、賭博行為と飲酒運転は一向に止まるところを知らず、とりわけノミ行為については、南国警察署が内偵をしていることが判明したため、被申請人中央生コンは、派遣契約をこれ以上継続することは困難であると判断し、やむを得ずこれを解除するに至つたものである。
四 被申請人らの抗弁
被申請人池本興業は、昭和五六年九月分以降の賃金については、申請人らに対し、前記平均賃金額の六〇パーセントを支払つている。
五 抗弁に対する認否
抗弁は否認する。被申請人池本興業は、前記のとおり、派遣契約の解除後、申請人らに対し、出勤命令を発し、これを拒否するや賃金の一〇〇パーセント不支給を目的として出勤停止処分を昭和五六年八月二二日になしているところであり、その後も、右と同様の出勤命令及び出勤停止処分が繰り返えされていて、六〇パーセントの賃金は支払われていない。
(乙事件)
一 申請の理由
1 被申請人中央生コンは、別紙物件目録記載の土地を池本博光から賃借して、同土地上に生コン製造工場を設置所有し、生コンの製造・販売を営んでいる。
2 前記(甲事件)三2、3のとおり、被申請人中央生コンは、被申請人池本興業との派遣契約に基づき申請人らの派遣を受け、ミキサー車運転の業務に従事させていたが、申請人らの行状が悪いため、右派遣契約を昭和五六年七月末をもつて解除した。これにより、申請人らと被申請人中央生コンとは何のかかわりもなくなつた。
3 しかるに、申請人らは、その後も右工場内の休憩室等に出入りし、そのため被申請人中央生コンの業務に支障を生ずるに至つている。
4 そこで、被申請人中央生コンは、本件土地に対する賃借権及び工場施設に対する所有権に基づき、申請人らに対し妨害排除を求める本案訴訟の提起を準備しているが、その判決確定をまっていては、被申請人中央生コンの業務に及ぼす損害は極めて甚大となる。
5 よつて、被申請人中央生コンは、申請人らに対し、別紙物件目録記載の土地のうち別紙図面の斜線内にある右工場及びその敷地(同図面斜線部分)内に立ち入るなどして同被申請人の業務並びに右工場及び敷地に対する占有使用を妨害することの禁止を仮に求める。
二 申請の理由に対する認否
1 申請の理由1は認める。
2 同2のうち、申請人らがミキサー車運転の業務に従事していたことは認めるが、その余は否認する。
3 同3、4は否認する。
三 抗弁
仮に被申請人ら間に派遣契約があり、この契約に基づき申請人らが派遣されていたところ、右派遣契約が解除されたものであるとしても、右解除は、前記(甲事件)一10記載のとおり不当労働行為として無効であるから、申請人らは、なお派遣要員としてミキサー車の運転手の地位にあるというべきである。
四 抗弁に対する認否
抗弁は否認する。
第三 疎明<省略>
理由
(甲事件)
一申請の理由1(但し、被申請人らが同族会社であることを除く。)及び2の事実は、当事者間に争いがない。
二被申請人中央生コンに対する主位的申請について
1 申請人らは、いずれも被申請人中央生コンに雇用されたものであつて、同被申請人との間には明示の労働契約が成立している旨主張するので、以下これについて判断する。
(一) 右争いのない事実に、<証拠>を総合すれば、申請人永野は昭和五三年七月から、同田中は同年一〇月頃から、同大川は昭和五一年二月頃から、同福田は昭和五四年一月から、同山田は昭和五二年九月から、同坂本は昭和五一年四月から、いずれも本件紛争が生じた昭和五六年七月三一日まで、被申請人中央生コンにおいてミキサー車(同被申請人保有)運転の業務に従事してきたこと、被申請人池本興業の主たる業務は砂利の運搬であり、これには六名の従業員がダンプ運転手として従事していたが、申請人らミキサー運転手と右ダンプ運転手とは明らかに勤務体制が異なつていたこと、すなわち、申請人らは、午前八時から午後四時までの間に、被申請人中央生コン取締役工場長長瀬明弘若しくは同被申請人従業員竹村幸次郎の配車指示を受けて現場に生コンを搬送し、現場においては同被申請人従業員岸本修己らの指揮を受け、右配車指示がないときには、同被申請人の会社の休憩室で待機していたものであり、就業中は同被申請人のネーム入り制服を着用していたこと、これに対し、ダンプ運転手は、被申請人池本興業取締役池本博光の配車指示を受けて、砂利採取地から被申請人中央生コン等の注文先へ砂利を運搬しており、これについては、毎日一定の運搬回数が要求され、その運搬回数を実現すれば事実上就業時間の拘束はなくなつていたこと、更に被申請人中央生コンは、昭和五一年後半に日本工業規格表示許可を申請するにあたり、ミキサー運転手を自社の従業員として記載した書類を作成提出したり、定期的に通商産業省に提出する生コンクリート統計四半期報に、「委託輸送の場合」と区分された「輸送部門」欄にミキサー車の運転手数を計上して報告したりしていることの各事実が一応認められる。
(なお、申請人らは、入社時、申請人永野及び同田中は前記長瀬明弘の、その余の申請人らは被申請人中央生コン代表取締役池本博光の面接を受けてそれぞれ採用された旨主張し、申請人永野公明本人尋問の結果中には、一部右主張にそう部分がある。しかし、<証拠>によれば、池本博光は、被申請人中央生コンのみならず同池本興業においても人事権を有し、自ら従業員の採用面接にあたつていたこと、これに対し、長瀬明弘は従業員の採用決定権を全くもつていなかつたことが一応認められ、これの事実に照らすと、長瀬明弘が申請人永野らの採用面接に同席したことはあつても、その採用を決定したとは到底認め難く、またその余の申請人らについても、池本博光が面接にあたつたからといつて被申請人中央生コンに採用されたとはいえないから、申請人らの右主張は採用できない)
(二) しかし他方において、<証拠>によれば、申請人らにかかる従業員名簿及び賃金台帳は、いずれも被申請人池本興業によつて作成保管され、申請人らに対する賃金の支給(賃金の前借を含む。)、健康保険・雇用保険の加入、定期健康診断の実施、有給休暇の管理については、すべて同被申請人が行つてきたこと、同被申請人事務所内には、同被申請人のタイムカード入れと被申請人中央生コンのタイムカード入れとが並置されていたが、申請人らはいずれも被申請人池本興業のタイムカード入れを利用していたこと、申請人らに関する賃上・一時金交渉は、前記ダンプ運転手らと共同して行われ、他方被申請人中央生コンの事務職員及び技術職員らは、申請人らと別途に右交渉を行つていたこと、後記のとおり申請人らは昭和五六年六月二五日に組合を結成しているが、その旨の通知書や団体交渉の申入書は、当初よりすべて被申請人池本興業宛てに提出されていることの各事実が一応認められ、申請人永野公明本人尋問の結果中、右認定に反する部分は、前提疎明資料に対比して採用し難く、他に右認定を覆すに足りる疎明はない。
(三) そして、右(二)に認定した事実に、<証拠>並びに弁論の全趣旨を総合すれば、生コンの製造・販売においては、砂利の販売等とは異なり、製造商品の性質上これを貯留しておくことができず、受注量の低減が直ちに業務量の低下をもたらすため、生コンの運搬につき正規の従業員を雇用しておくと、不況時に固定人件費の負担が過大となり、企業経営を圧迫するおそれがあることから、他社より運転手の派遣を受ける方が企業経営上有利であること、被申請人中央生コンにおいては、昭和五〇年一二月初旬に工場設備の完成をみたが、操業を開始するにあたり、取締役会の決議をもつて、ミキサー車の運転手は自社で雇用せず、他社から派遣を受けることにする旨の方針が決定されていること、他方、被申請人池本興業においては、不況時にも、砂利を社有地にたい積することによつて運搬を継続できるため、直ちに業務量の低下を来たすことはなく、また他社の運搬業務を請け負うことも可能であり、かつその実績もあることから、自社の従業員として雇用して他社へ派遣し、当初予定した派遣の目的が終了したり或いは派遣先の不況のために若干名の従業員が返される場合には、これを再び受け入れて自社で、就労させる能力を有していたこと、被申請人中央生コンの操業開始以後、同被申請人から被申請人池本興業に対し、毎月五日ごとに、ミキサー車の運転手の賃金相当額に1.05ないし1.10を乗じて計算した派遣料が支払われていること、本件紛争以前に、申請人らの一部の者が、前記池本博光に対し、被申請人中央生コンの正規の従業員としての雇用方を要請していることの各事実が一応認められ、右認定に反する申請人永野公明本人尋問の結果は採用できず、他に右認定を覆すに足りる疎明はない。
(四) 以上認定したところを総合して検討するに、なるほど前記(一)記載のとおり申請人らの主張にそう事実も存するけれども、前記(二)及び(三)に認定した事実をあわせ勘案すれば、申請人らと被申請人中央生コンとの間に明示の労働契約が成立しているとは到底認め難く、かえつて、申請人らの労働契約の相手方、すなわち雇主は被申請人池本興業であり、申請人らは、同被申請人に雇用されたうえで、同被申請人と被申請人中央生コンとの間の派遣契約に基づき被申請人中央生コンへ派遣され、同被申請人の指揮監督を受けてミキサー車の運転に従事していたものと認められる。
2 次に申請人らは、申請人らが被申請人池本興業から同中央生コンへ派遣されてミキサー車運転の業務に従事していたとしても、同中央生コンと申請人らとの間に存する使用従属関係からして同中央生コンと申請人らとの間には黙示の労働契約が成立している旨主張する。
そこで検討するに、およそ労働契約は、労働者が労務を提供し、これに対し使用者が賃金を支払うことを内容とする契約であり、もとよりその成立には、労働者と使用者との間に、明示的にせよ黙示的にせよ意思の合致を必要とする。これに対し、右労務を受領するのが使用者であることは、必ずしも絶対的な要件ではない。すなわち、いわゆる在籍出向の場合には、第三者たる出向先企業が労務の提供を受けることになるけれども、これによつて、出向元企業との労働契約が消滅して、新たに出向先企業との間に労働契約が成立するわけではなく、出向元企業との労働契約の履行として出向先企業に対し労務の提供が行われるにすぎないものであり、このことは、法(民法六二五条一項)の予定するところである。したがつて、労務の提供が行われ、いわゆる使用従属関係が存在するからといつて直ちに、その関係につき労働契約が成立しているものとみるのは相当でなく、その成立には使用者と労働者との意思の合致を必要とするのである。もつとも、労働者派遣の場合において、労働契約上の使用者が、全く実体のないものであつたり、仮に実体を有していても労働者との間に実質的な契約関係というべきものが存在せず、ただ形式的に労働契約の外装を作り出しているにすぎないようなときで、むしろ労働者の派遣を受ける者が労働者の採否や賃金額等を直接決定しているといえるようなときには、当該労働者とその派遣を受ける者との間に、直接の労働契約を締結する黙示的な意思表示がなされたものと推認できることはありうる。
これを本件についてみるに、前示のとおり、申請人らは、被申請人池本興業との間で労働契約を締結し、同被申請人と被申請人中央生コンとの派遣契約に基づき同被申請人のミキサー車運転の業務に従事していたものであるが、前記当事者間に争いのない事実と1(二)及び(三)に認定した事実によれば、被申請人池本興業は、独立の法人格と実体を有し、自らも砂利運搬の事業を営んでいて、前記のように派遣先の不況時には、派遣従業員を再び受け入れる能力をそなえた企業体であつて、被申請人中央生コンのみならず申請人らからも実質的な契約当事者と認められていた存在であり、しかも申請人らについては、被申請人池本興業の従業員として同被申請人との間で賃金等の交渉決定が行われてきたものといえるから、前記1(一)のような就労の実態があつても、申請人らと被申請人中央生コンとの間に直接の労働契約を成立させる黙示的な意思表示があつたものと認めることはできない。
3 以上のとおり、申請人らと被申請人中央生コンとの間には、明示的にも黙示的にも労働契約が成立したものと認めることはできない。したがつて、同被申請人に対し、従業員としての地位保全と賃金の仮払いを求める申請人らの主位的申請は、その余の点について判断するまでもなく、被保全権利の疎明を欠くものとして失当である。
三被申請人池本興業に対する主位的申請について
右主位的申請は、申請人らと被申請人中央生コンとの間に労働契約の成立が認められることを前提としているものであるから、前記のとおり右労働契約の成立が認められない以上、これについても被保全権利の疎明を欠くものとして失当たるを免れない。
四予備的申請について
1 申請人らは、被申請人中央生コソは申請人らとの関係において労働組合法七条の「使用者」にあたるとしたうえ、同被申請人による派遣契約の解除は不当労働行為として無効である旨主張するので、以下この点について判断する。
(一) 労働組合法上の不当労働行為制度は、憲法二八条に由来し、労働者のいわゆる労働三権を保障し、もつて労働関係上の諸利益を保護しようというものであるから、その制度及び趣旨からして、同法七条に違反する法律行為は当然に無効と解すべきである。
(二) そして、右のような不当労働行為制度の趣旨に照らせば、労働組合法七条によつて不当労働行為の抑止を義務づけられる「使用者」の範囲については、必ずしも労働契約上の使用者に限られず、労働者の労働三権の行使に密接な利害関係を有し、かつ自己の行為によつて直接労働三権を侵害しうる地位にある者も、これに含まれると解するのが相当である。
これを本件についてみるに、前記当事者間に争いのない事実及び二に認定した事実に、<証拠>並びに弁論の全趣旨を総合すれば、申請人らの賃金交渉は被申請人池本興業との間で行われているとはいえ、その結果は、同池本興業と被申請人中央生コンとの間の派遣料の多寡に直接影響すること、労働時間、安全基準等の就労条件については、同中央生コンと申請人らとはまさに利害が対立する関係にあること、同中央生コンは、ミキサー車運転の業務につき被申請人池本興業より申請人らを含む一二名の運転手の派遣を受けていたものであるが、被申請人池本興業の受入能力は前記認定のような状況にあるため、派遣契約を恣意的に一挙に解除することによつて、申請人らの就労の機会を奪うことも可能な地位にあり、しかも、被申請人らの各会社の取締役はその一部の者が兼任し、被申請人らの株式もほとんど池本惇一、池本博光及びその親族が保有しており、池本博光は被申請人中央生コンのみならず被申請人池本興業においてもその代表者から委任を受け事実上の責任者として事業運営にあたつていたことからして、恣意的な解除権の行使は一層容易であつたことが一応認められるから、就労の機会を奪うことが労働三権の行使にとつて最も脅威となることに照らし、被申請人中央生コンは、申請人らにとつて労働組合法七条の「使用者」にあたるものということができる。
(三) そこで、被申請人中央生コンが申請人らにつきなした派遣契約の解除が不当労働行為にあたるか否かについて検討するに、<証拠>によれば、次の事実が一応認められる。
(1) 被申請人中央生コンが同池本興業に対し派遣契約を解除した理由は、申請人らを含む一二名の派遣要員が同中央生コンの会社内でいわゆるノミ行為に関与したり、「オイチョカブ」と称する賭博を行つたり、また飲酒をひん繁に繰り返し飲酒運転を行うなど、その行状は著しく悪く、同中央生コンの会社の運営上支障を来たす、というのであり、たしかに派遣要員のほとんどの者が右行状にあつたことは否定し難い(もつとも、全く関係のなかつた者も一名いる。)けれども、同中央生コンにおける正規の男子従業員のほとんどの者が、程度の差はあれ、派遣要員らとほぼ同様に振舞つていた(もつとも、飲酒運転については、同中央生コンの会社の近くに居住していたために、これを行つていなかつた者もいる。)ものであり、にも拘らず、組合結成に関係のない他の従業員らに対しては、何らの処分もなされていないこと。
(2) 賭博等の行為は、ミキサー車の配車待ちの時間を利用して行われていたものであり、また飲酒は、終業時以降に被申請人中央生コンの会社内の休憩室で行われていたものであつて、これによる飲酒運転が職業運転手として許されない行為であることはいうまでもないけれども、派遣要員中飲酒運転で検挙された者はわずか一名にすぎなかつたものであり、派遣要員らの右行為によつて、同被申請人の業務自体に著しい支障を来たすことはなかつたこと。
(3) もとより派遣要員らの右行状については、池本博光から口頭による注意が行われてきたものの、それ以上に格別懲戒処分が行われているわけではなく、また後記希望退職者募集の際にも、要員削減上有利な事柄であつたと思われるのに、行状の点は全くもち出されていないところであり、被申請人中央生コンにとつて、派遣要員らの行状がどうしても無視できないものとしては意識されていなかつたこと。もつとも、同被申請人は、昭和五六年七月一三日前記休憩室に、賄博行為及び飲酒行為を禁止する旨の警告書を掲示したが、これは、申請人らが組合活動を始めてから後のことであり、なお右掲示後の同月一四日になされた飲酒行為は、組合結成式終了後の懇親会であつて、事前に被申請人中央生コンの了承を得ていたものであり、その後右警告書に反する行為がなされた形跡はないこと。
(4) 昭和五六年六月頃、被申請人池本興業が派遣要員二名を削減する目的で希望退職者の募集をしたところ、これには誰一人応じなかつたものの、これが契機となつて、解雇を防ぎ労働条件を向上させるべく派遣要員一二名とダンプ運転手六名が参加して、同年六月二五日に組合が結成され、翌七月九日と一四日の両日にわたり、池本惇一との間で夏季一時金及び労働協約の締結に関して団体交渉が行われたが、ともに妥結するに至らなかつたため、申請人らを含む組合員らは、同月一六日より、ミキサー車、ダンプ車の双方につき時間外就業と過積載運転の拒否闘争を継続しているうち、被申請人中央生コンから同池本興業に対し同月一八日付書面をもつて同月三一日限り派遣契約を解除する旨の通知がなされたこと。
(5) 池本博光は、従前より被申請人池本興業の取締役として、人事管理権を掌握し、派遣要員及びダンプ運転手との賃金交渉にあたつていたが、申請人らが労働組合を結成し団体交渉の申入れをするや、直ちに、同被申請人の代表者でないことを理由にこれを拒否したこと。また、池本惇一は、池本博光から派遣契約解除の通知がなされる以前に、派遣要員の行状が悪いということを知らされていたというのに、被申請人池本興業の代表者でありながら、その事業の経営を右博光に委せていたとして申請人らに何らの注意も与えていないこと。更に、池本惇一は、派遣契約が解除されれば、被申請人池本興業にとつては一挙に派遣要員である一二名の従業員をかかえ込むこととなり、経済的にも重大な結果を招来することになると思われるのに、その派遣契約の解除を決定したという被申請人中央生コンの取締役会において、単に右契約解除に反対意見を述べたというにすぎないこと。
(6) 右派遣契約の解除後、被申請人池本興業より申請人らに対し自宅待機命令、出勤停止処分がなされる中で、組合を脱退したり、同被申請人を退職する者があい次ぎ、その二か月後には、組合員は、派遣要員の中では申請人らのみとなり、ダンプ運転手もわずか二名に減じたこと。
(7) 被申請人中央生コンは、昭和五六年九月一日、元派遣要員であつて、同年七月三一日に組合を脱退し、同年八月末日をもつて被申請人池本興業を退職していた西岡幸雄を、前記賭博行為の中心的な人物の一人であつたにも拘らず臨時職員として採用し、再びミキサー車運転の業務に従事させており、また同年一〇月一日には、元ダンプ運転手であつて、同年八月末日をもつて被申請人池本興業を退職し、組合を脱退していた田渕務を臨時職員として採用しミキサー車運転の業務に従事させていること。
(8) 被申請人池本興業が前記のとおり希望退職者を募集したのは、同中央生コンにおいてミキサー車の保有台数を減少させる必要があつたからにほかならないが、同被申請人は、派遣契約の解除後まもなく、三台のミキサー車を他に売却し、右目的を達成していること。
以上の事実が一応認められ、<証拠>中、右認定に反する部分は、前掲疎明資料に照らして採用できず、他に右認定を覆すに足りる疎明はない。なお、被申請人らは、派遣契約の解除に至つた契機として、その直前頃に、派遣要員のノミ行為に対して南国警察署が内偵していることが判明したことを主張するけれども、右池本博光の代表者本人尋問の結果中にも「昭和五六年七月上旬頃、南国警察署で開催された交通安全協会の席上でノミ行為の話がでた。」旨の供述があるのみで、その詳細は明らかではなく、その後警察の事情聴取等を受けた形跡も全くないことに照らせば、申請人らを含む派遣要員に対し右主張のような内偵がなされていたものとは認め難いし、他に右主張を裏付けるに足る疎明資料はない。
右認定の事実を総合すれば、被申請人中央生コンは、申請人ら派遣要員が組合を結成し、組合活動したことを嫌悪し、反組合的意図のもとに、被申請人池本興業と意思相通じ、右認定の行状に藉口して被申請人池本興業との間の派遣契約を解除し、申請人ら派遣要員の就労の機会を奪つたものであり、この解除は、派遣要員らに対する不利益取扱いであるとともに、組合に対する支配介入であると評価することができる。
したがつて、被申請人中央生コンのなした派遣契約の解除は不当労働行為として無効である。
2 以上のとおり、申請人らにつきなされた派遣契約の解除が無効である以上、その解除を前提として被申請人池本興業がなした自宅待機命令、ダンプ車への乗車命令及びこれの拒否を理由とする出勤停止処分も当然に無効であり、申請人らは、なお被申請人中央生コンへ派遣された派遣従業員としての地位にあるというべきである。
したがつて、申請人らは、労働契約上の使用者である被申請人池本興業に対し、右派遣従業員としての取扱いを求めることができるとともに、賃金全額の支払を請求することができるものといわなければならない。
また、申請人らと被申請人中央生コンとの間には、労働契約関係は存在しないけれども、申請人らと被申請人池本興業との労働契約、被申請人ら間の派遣契約及び右派遣に対する申請人らの承諾を媒介として、労務の提供と受領という一定の法律関係が形成されていたものであるから、申請人らは、被申請人中央生コンに対し、申請人らを自社に派遣を受けたミキサー車の運転手としての取扱いを求めることができるものというべきである。
3 そこで、被申請人池本興業に対する賃金請求権の内容について検討するに、申請人らの賃金が月払いの日給制で、毎月末日締めの翌月五日払いとなつていること、昭和五六年五月から同年七月までの三か月間の平均賃金の日額が別紙賃金目録(三)記載のとおりであることは、当事者間に争いがない。そして、その月払額については、一か月を三〇日とし、うち四日を休日とみて、右平均賃金の日額に二六日を乗じて算出するのが相当であるから、申請人らは、被申請人池本興業に対し、派遣契約の解除後も、毎月右計算方法により算出した別紙賃金目録(一)記載の各賃金を請求できることとなる。もつとも、昭和五六年八月分の賃金のうち同目録(四)の(1)の①欄記載の金額を受領していることは申請人らの自認するところであるから、これを控除するとその残金は同目録②欄記載のとおりとなる。
ところで、被申請人池本興業は、昭和五六年九月分以降の賃金については、毎月その六〇パーセントの割合による金員を支払つている旨主張する。
<証拠>によれば、昭和五六年九月から同年一一月分の賃金については、同被申請人から申請人らに対し、別紙賃金目録(四)の(2)ないし(4)の各①欄記載のとおりの金額がそれぞれ支払われていることが一応認められる。
そこで、その後の賃金について検討するに、被申請人池本興業は、前記のとおり昭和五六年八月二二日に六日間の出勤停止処分をしているところであり、また、<証拠>及び弁論の全趣旨によれば、同被申請人は、昭和五七年二月から同年七月にかけて、申請人らに対する出勤命令及びこれに違反したとして一〇日ないし一四日間の出勤停止処分を繰り返していることが一応認められ、これらの事実に徴すれば、昭和五六年一二月分以降の賃金について、同被申請人が賃金の六〇パーセントを支払つているものとは認め難い(仮に賃金の一部が支払われているとしても、容易に提出できる賃金台帳等を提出していないのであるから、その具体的金額を確定することができない。)から、結局のところ、支払の事実については疎明がないことに帰する。
以上によれば、申請人らは、被申請人池本興業に対し、昭和五六年八月分から同年一一月分までの賃金残額として、別紙賃金目録(四)の(1)ないし(4)の各②欄記載の金額を合算した金額である同目録(二)記載の金額を、同年一二月以降分として昭和五七年一月五日を初めとして毎月五日限り同目録(一)記載の金額をそれぞれ請求しうることになる。
4 <証拠>によれば、申請人らは、いずれも賃金を唯一の収入として生活する労働者であつて、他に格別資産とてないことが一応認められるから、本案判決確定に至るまで、被申請人池本興業から賃金の支払を受けられないでは生活に困窮し、著しく損害を蒙るものというべきである。もつとも、申請人らは、自宅待機中被申請人池本興業から賃金の六〇パーセントの支給を受けることができる建前にはなつているけれども、前記のとおり昭和五六年八月分から同年一一月分までの賃金についてはその一部が支払われているものの、同年一二月分以降については右の建前が履行されているとの疎明がないから、同年一二月分以降の各賃金についてはその全額につき仮払いの必要性があるものというべきである。また、撮影年月日、被写体ともに争いのない<証拠>によれば、申請人らが、派遣契約の解除後一時的にアルバイトをしていることが一応認められるけれども、継続的に安定した収入を得ているものとは認め難いから、賃金仮払いの必要性を左右するものとはいえない。
そして、派遣契約の解除は前記のとおり無効というべきところ、被申請人らはこれを有効と主張し、申請人らのミキサー車の運転手としての就業を拒否しているのであるから、申請人らと被申請人らとの間の労働関係についてそれぞれ仮の地位を定める必要性がある。
5 以上によれば、申請人らの予備的申請のうち、被申請人中央生コンに対し、同被申請人に派遣を受けたミキサー運転手としての取扱いを求めるとともに、被申請人池本興業に対し、被申請人中央生コンへの派遣従業員としての取扱いと右認定の限度における賃金の仮払いを求める部分はいずれも理由があるが、その余は理由がない。
(乙事件)
一申請の理由1は当事者間に争いがなく、申請人らが、被申請人ら間の派遺契約に基づき被申請人中央生コンへ派遣され、ミキサー車運転の業務に従事していたところ、被申請人中央生コンにより派遣契約が解除されたことは、前認定のとおりである。
二しかし、右派遣契約の解除が不当労働行為として無効であることも前認定のとおりであつて、申請人らは、なお派遣要員としてミキサー車運転手の地位にあるといえるから、申請人らの抗弁は理由がある。
三そうすると、被申請人中央生コンの仮処分申請は、その余の点について判断するまでもなく、被保全権利の疎明がないというべきであり、また、事案の性質上保証を立てさせて疎明にかえることは相当でないから、失当たるを免れない。
(結論)
以上の次第であるから、甲事件については、申請人らの主位的仮処分申請をいずれも却下し、予備的仮処分申請のうち前記限度において理由があるから保証を立てさせないでこれらを認容し、その余は理由がないからこれを却下することとし、乙事件については、被申請人中央生コンの仮処分申請をいずれも却下することとし、申請費用につき民事訴訟法九二条本文、九三条一項、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(山口茂一 増山宏 坂井満)
別紙 賃金目録(一)〜(四)<省略>
別紙 物件目録
別紙 図面<省略>